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役員持株会と招集通知

役員候補者が持株会(役員持株会)内で保有している持株数は、招集通知の参考書類に記載しなければならないのか。


結論としては、持株会内での保有株式数も加算した記載が必要である。

弥永真生教授の「コンメンタール会社法施行規則」にて「持株数は、会社関与への程度を明らかにする情報の一つであり、オーナー経営者かどうかを判断する材料にもなるので、候補者が実質的に所有する株式数を記載すべきである」とされている。

加えて、大阪株式懇談会(大阪株懇)の出版図書「会社法実務実務問答集Ⅰ上」では、京都大学北村雅史教授が、役員持株会の持ち分相当の株数を記載すべきであり、単元未満株数も加算すべきだと明確に記している。

実質株主の株主総会出席

CGコードにおいて、上場会社は実質株主による株主総会出席への対応が求められているが、実質株主を株主総会に出席させる法的なリスクは何か。

実質株主は株主名簿上の株主ではないため、会社に対する株主の対抗要件を具備しておらず、株主本人として株主総会へ出席するなど、株主総会における株主権の行使を認める必要はないのが原則である。また、学説上も非株主が決議に加わった場合は、決議取消事由に該当すると解するのが通説とされている(但し、実質株主は株主名簿上の株主の代理人として行使できるとする有力な学説もある)。そもそも、株主総会に出席して議決権等株主権の行使を行う意向があるのであれば、株主名簿上に自らの氏名等を明らかにした上でこれを行使すればよく、実質株主の入場を認めない対応には一定の合理性があると考えられる。

招集通知を早期開示する場合の日付

株主総会の招集通知を早期開示する場合、招集通知に記載する日付はいつの日付を記載すべきか。

特に定めがあるわけではないが、招集通知に記載する日付は実際に招集通知を発送する日付になると考えられる。

閉会宣言後の質疑応答と議事録

株主総会閉会宣言後、株主から質問があり、議長が回答を行った。このような質疑応答に関して、議事録上での扱いはどうすべきか。

このようなケースでは、最初の閉会宣言は撤回されたと解釈するのが合理的であり、株主総会議事録には閉会宣言後の質疑についても記載すべきである。

希少言語による質問の打ち切り

株主総会において、理解できる人がいない希少言語で行われた質問に対し、質問を打ち切ることは問題ないか。また、このケースで株主の用意した通訳の入場を認めないことは問題ないか。更に、招集通知に「質疑応答の言語を日本語・英語に限る」という記載をしていた場合としてない場合で会社対応は変わるか。

株主総会における取締役の説明義務は株主が合理的な方法で質問した場合であり、希少言語による質問は回答できなくても問題はない。但し、このケースにおいて、株主の用意した通訳の同伴者を、代理人資格を株主に限定する定款の定めをもって拒絶することは、株主の権利の妨げとなる。なお、招集通知への質疑応答の言語の限定記載の有無によって、会社の対応すべき内容に変わりはない。

通訳の設置

株主総会開催にあたり、株主より通訳の設置を求められた。対応する必要はあるか。また、株主自ら用意した同伴者(通訳)の入場を求められた場合は、どう対応すべきか。

株主総会における通訳は、株主総会会場における受付等と同じ設備とみなすことができるので、その設置に関しては費用対効果を考えた上での経営判断ということになる。その判断の結果として、通訳の設置を拒絶することは可能である。
会社で通訳を用意する場合、株主の用意した通訳の同伴者は入場を認めることも拒絶することも可能である。一方で、会社で通訳を用意しない場合、株主の用意した通訳の同伴者の拒絶は、株主の権利の妨げとみなされる。

WEB開示資料の修正対応

株主総会終了後、3ヶ月以内にWEB開示資料に誤りが発見された。この場合、会社としてどう対応すべきか。また当該WEB開示を発見時点で掲載している場合と、既に掲載していない場合で対応は変わるのか。

当該誤りが実質的な内容に関するものである場合は、株主はその意思決定がゆがめられたこととなり、株主総会決議取消事由となる。内容によっては、取締役自らが会社法831条(株主総会等の決議の取消しの訴え)に基づき、決議取消の訴えを提起しなければ、取締役の任務懈怠になるであろう。なお、当該関連書類を既に開示していない場合、会社は株主がその内容を確認し、決議取消権を行使すべきか判断できるよう、再度開示しなければならない。

WEB修正のタイミングと対応

招集通知発送後に社外取締役候補者が社外要件を満たさないことが判明した。本件をWEB修正で対応することは可能か。また、それに伴って「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載する義務が生じたが、当該内容もWEB修正で開示することは可能か。

参考書類の基準時は書類作成時であり、招集通知発送後に発生した事象、今回で言えば、社外性要件を満たさない事象が発送後に起きたのであれば、株主総会当日に説明すれば事足り、WEB修正で知らせることは問題がない(あくまでお知らせ)。
一方、社外性要件を満たさない事象が以前に生じていたが、招集通知発送後に気づいた場合は注意が必要である。まず、本件では社外取締役選任議案が取締役選任議案に変更になる。この変更は株主にとって重大な変更であるとは言えず(候補者が社外取締役になるか取締役になるかは株主にとって左程重要ではないと思われる)、著しく不公正であるとは言えない。従ってWEB修正は可能。しかし、「社外取締役を置くことが相当でない理由」は、WEB開示が認められていない事項であり、これを会社法は重要であると見なしていると考えることができる。会社法が重要とみなしている事項をWEB修正対応してしまうと法の主旨に違反することになるので、本件はWEB修正ができないこととなる。

定足数に満たない議案

株主総会の議案において定足数が確保できなかった場合、どうなるのか。

その決議は不成立となる。但し、役員の選解任には代替措置がある。会社法346条(役員等に欠員を生じた場合の措置)や同法854条(株式会社の役員の解任の訴え)などである。それ以外の定足数が必要な議案は再開催する必要がある。なお、株主総会の延期、続行は普通決議で決議可能(定足数不要)であり、延会には最初の株主総会に出席しなかった株主も参加可能である。但し、延会は「相当の期間内」に開催する必要がある。

議決権行使書と異なる意思表示

議決権行使と職務代行通知を持参していた大株主の従業員が、株主総会の議場で議案に対して反対行使を行ったが、持参した議決権行使書には賛成表示が書かれてあった。この場合の議決権の取扱いはどうなるのか。

反対行使の意思表示が有効である。従業員は無権代理だという解釈も有り得るが、このケースにおける行使は有効であると解釈するのが一般的であろう。また、事前に約束していた議決権行使と異なる行使を行うことは妨げられない。本件は本人と代理人の間における委任上の義務違反が問題であり、議決権行使に問題はない。

議決権行使書と採決前の退出

議決権行使書と職務代行通知を持参していた大株主の従業員が、株主総会の採決を待たずに会場を退出してしまった。当該従業員が持参した議決権行使書には賛否の意思表示は記載されているので、議決権を行使したと取り扱うことは可能か。

行使したと取り扱うことはできない。職務代行通知を持参した従業員が代理人ではなく代行(代表取締役の手足に過ぎない)であるという議論はあるが、代行に過ぎないと考えたとしても、株主は採決時に賛否表示をして初めて議決権を行使したとみなされるため、採決時に不在では行使したとはみなされない。なお、議決権代理行使には株主に限定する定款規定を置いていることがほとんどであるが、法人代理は株主でなくとも良いという判例がある。

海外の株主総会開催日

海外では、日本のような株主総会の「集中日」の問題は生じていないのか。

海外では、日本のような株主総会の「集中日」問題は生じていない。株主総会を開催できる期間が日本と比べて長いうえ、議決権を持つ株主を確定させる基準日を、日本企業のように決算期末に揃えていない企業が多いためである。米欧では決算日から4~6カ月目の4月下旬から6月までに分散して開催する傾向が強い。
また、株主確定日である議決権行使基準日から株主総会開催までの日数が、日本に比べて短い先進国が多い。日本の平均が85日に対し、米国55.7日、カナダ44.9日、フランス4.4日、英国2.2日。

監査役と会計監査人選任議案

平成26年の改正会社法により監査役は会計監査人(監査法人)の選任議案を決められるようになったが、その意義は何か。

改正前の監査役には会社が提案する選任議案への同意権があった。改正会社法により、監査役が自ら決められるようになり責任が重くなった。だが実務上は、従来も会社の執行部と話し合って選んできたので実質的な変更ではないとされている。

決算日と基準日

決算日と株主総会の基準日を変えることは可能なのか。

法律上は問題がない。しかし、議決権の基準日変更は決算や配当との兼ね合いなど実務上調整が必要な点が多く、企業にとってコストや手間がかかる。また、業績悪化や不祥事発生の際には株主総会のコントロールが難しくなるという問題点もある。

株主総会が集中する理由

なぜ株主総会の開催日は集中するのか。

会社法は議決権を行使できる株主を確定する「基準日」から、3カ月以内に株主総会を開くよう求めており、3月末決算会社の多くは、この「基準日」を決算期末と同じ3月末と定款に定めている。このため、約3カ月後の6月末に総会が集中する。決算の取りまとめや監査と並行して総会の準備を進めたほうが効率的という実務上の都合もある。

議決権行使結果の開示と株主総会議事録

内閣府令の施行により、議決権行使結果を開示する義務が生じたが、これら議決権行使の結果は株主総会議事録に添付する必要はあるか。

会社法は株主総会議事録に「議事の経過の要領及びその結果」の記載を求めているだけで、議決権行使の集計結果の添付は要求していない。内閣府令は情報の開示を求めているのであり、将来の紛争に備えた記録としての株主総会議事録とは趣旨が異なる。議決権行使結果の添付はあくまで任意である。

株主総会会場の開場時間

招集通知に記載している株主総会の開催時刻よりかなり早い時刻に株主が到着した場合、開場予定時刻を遵守して入場させなくても問題はないか。

株主総会会場の開場時刻は会社の裁量が認められており、開場時刻が著しく不合理ではなく、株主に不利益ではないのであれば問題はない。しかし、多数の株主が来場することが予想されつつも、開会時刻直前に開場したため入場が殺到し、その結果、株主総会の開始時刻が遅れた場合などは、招集手続が著しく不公正となり問題が生じる。

質問の打ち切りの可否

株主総会において、実質的に同じ質問を繰り返しているわけではないものの、何名もの株主から質問が延々と続く場合、質問を打ち切ることは可能か。

会社法315条の定める議長の議事整理権により打ち切ることは可能であるが、それは長時間の結果ではなく、必要な情報の提供が終えたと客観的に判断した結果であれば可能となる。

法人株主の株主総会出席

法人株主の総会出席で留意する点はあるか。

定款に出席株主の代理人を株主に限定する定めを置いている場合、原則として代理人は株主でなければならない。しかし、例外として法人株主である場合は、その従業員が代理として議決権を行使することは認められている(最高裁判決)。法人株主の代理人の確認方法としては、議決権行使書(委任状)と職務代行通知書などが考えられる。ただし、議決権行使書さえ持っていれば本人確認の必要は特に不要であり、本人が従業員でなかったとしても会社は免責される。

質問専用受付の設置

質問株主数を事前に把握するために、質問希望株主の専用受付を設置し、議場で順に質問を受け付ける方法を実施することに、問題点はあるか。

まず、事前受付をしなかった株主の質問は議場で受け付けなくていい、というわけではなく、定款の定めをもってしてもこれを制限することはできないという問題がある。また、事前受付をした株主の質問を会社は全て受け付ける義務があるというわけでもなく、必要な情報の提供が終えたと客観的に判断できれば打ち切ってしまうことは可能。よって、事前受付をすることは、それ程メリットがあるとは言えない。