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譲渡制限付き株式報酬

2016年に解禁された「譲渡制限付き株式報酬」とは何か。どういったメリットがあるのか。

2015年に導入されたコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は「中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべき」と要請した。こうした動きを受け、2016年4月に制度が整えられ、解禁されたのが譲渡制限付き株式である。

株式の無償発行は会社法で認められないため、役員にはまず金銭報酬債権を支給。それを会社に現物出資させたうえで、株式を交付するという手続きを取る。

従来の株式報酬はストックオプション(株式購入権)や、信託銀行がポイントなどを使って管理する「信託型」が主流だった。どちらも中期計画など一定期間終了後に現物株を取得できるが、それまでは株主ではない。これに対し、譲渡制限付き株式は付与時点から配当受け取りや議決権など株主の権利が得られるという点にメリットがある。

譲渡制限付き株式報酬とストックオプションの違い

譲渡制限付き株式報酬はストックオプションとどのような違いがあるのか。

経済効果としては、譲渡制限付き株式報酬も新株予約権を使った1円ストックオプションも、さらに信託給付型の株式報酬も、役員に対する経済的効果は同じである。一番の違いは、いつ株を持つかということ。譲渡制限付き株式報酬は最初に必ず株を持つが、1円ストックオプションは株を買う権利がもらえるだけで、権利行使は保有者に委ねられる。株式の保有の促進という目的においては譲渡制限付き株式報酬は手っ取り早い。役員が退任後に株を持つのでは、株主目線での経営は期待しにくい。

株式報酬のメリット

長期報酬として現金ではなく、株式報酬にする利点は何か。

株式公開企業の経営陣はできる限り「株主と同じ船に乗る」、つまり同じ方向を向くことが重要とされている。株式を持つことで、株価の上昇、下落ともに責任を持つことになり、株主と同じ方向を向くことが可能となる。株価が値上がった分を現金で決済する株式評価益権(SAR)もあるが、これは株価の値下がりに責任を持たないうえ、現金賞与なので法人税法上の損金算入ができないといったデメリットがある。

3種類の株式報酬

株式報酬には、どのような種類のものがあるか。

株式報酬は大きく分類すると3つの種類あり、1.ストックオプション(株式購入権)、2.譲渡制限付き株式報酬、3.パフォーマンス・シェアがある。譲渡制限付き株式報酬、パフォーマンス・シェアはいずれも現物株式を直接役員に付与するが、従来は会社法上難しいとされてきた。法的な解釈の整備と2016年度税制改正により、実質的に解禁されることになったため注目度が上がっている。

譲渡制限付き株式報酬とは、一定期間が経過するまで売却できないという制限を付けた株式のこと。期間内に離職すれば無効になる。株価を成長させ、配当性向を高めるインセンティブが働き、離職防止にもつながる。

パフォーマンス・シェアとは、業績の達成度に応じて報酬が変化する株式のこと。最初に取り決めの範囲で最大量の株式を渡しておき、達成度に応じて譲渡制限を解除する。最高目標を達成すれば全株売却できるが、未達なら売却数が制限される。制限が解除されなかった分の株は会社に返す。指標は投下資本利益率(ROIC)、1株あたり利益、株主還元率(TSR)などが使われる。

役員報酬と会社法

株式会社の役員(主に上場企業)の報酬額はどのようにして決められるのか。

会社法では、監査役会設置会社と監査等委員会設置会社は役員報酬の総額(枠)を株主総会で、分配を取締役会で決めるように定められている。指名委員会等設置会社は社外取締役が過半数を占める3人以上の報酬委員会を設置し、そこで決定する。また、コーポレートガバナンス・コードでは会社の形態にかかわらず、『中長期的な業績との連動』や『報酬委員会の設置』が求められている。税制改正により、役員報酬として譲渡制限付き株式(リストリクテッドストック)を付与することが事実上解禁となったほか、詳細な開示を条件として損金算入できる利益連動給与が導入され、インセンティブ報酬の選択肢が増えている。