相談役・顧問制度の情報開示

上場企業が相談役・顧問制度の情報開示を求められるのはなぜか。

東京証券取引所が上場企業に相談役・顧問制度の情報開示を求めたのは、日本企業の経営の透明性を高めて企業価値の向上につなげることが狙い。相談役・顧問制度は会社法に規定がなく、設置基準も企業によってばらばら。海外にはない日本独特の制度でもあり、株式市場で存在感を増す外国人投資家からは「制度が不透明」との指摘が多く、トップ経験者による「院政」が経営を混乱させるとの国内外の投資家の懸念が後押しになった。

相談役・顧問制度は終身雇用を前提とした日本的経営の、いわば「終着点」であり、社長を務めたあと半ば自動的に顧問や相談役のポストに就くのは、日本企業に長く根付いた慣習とされている。経営トップにしてみれば、自分を引き上げてくれた元上司である相談役や顧問の処遇には触れづらい。また「社長OBの助言は大局的で有益」といった声も根強く、財界活動のために制度を設けている企業も多い。

こうした事情も勘案して、経済産業省が2017年3月にまとめた「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」でも「相談役・顧問が一律に良い・悪いというものではない」との文言が盛り込まれている。